フィルムで写真を撮ってみませんか。

「フィルムを使う写真に興味を持つ人を一人でも増やす」ことが目標の一個人の活動

レンズの話(個別第一回)ニコンAi-s50mmF1.2(ニコンFマウント)

 さて。

 

 今回から、レンズの紹介を始めましょう。前回にお話しした通り、作例はそろっておりませんし、デジタルカメラで撮影した写真を掲載することもなんとなく癪に障る(このブログはフィルム写真を推奨するページであることから、趣旨に合わない)ため、当面は作例はございませんので、ご承知おきください。

film-camera-challenge.hatenablog.com

 一つ目の紹介するものって、何にしようかとっても悩みました。ナメられないように、珍しいものからかかるか、とても古いものにするか、特殊性の高いものにするか・・・・

 しかし、このブログの趣旨は、「フィルムを使う写真に興味を持つ人を一人でも増やす」ことが目標でございます。ついては、珍しいものでない、とても古いものでない、特殊性の高くないもので、かつ、おおっというようなものとなると、このレンズにしか思い当たりませんでした。

 現行品の、ニコン製Ai-s50mmF1.2です。

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 現行品なので、詳細情報はこちら

www.nikon-image.com

 1981年(昭和56年)発売の、36年ロングラン選手でございます。ちなみに、ニコンでは2018年3月7日現在、このレンズを含めて8本のマニュアルフォーカスレンズが未だに販売されております。そのうちの2本が、50ミリレンズです。

 

 50mmF1.2は、標準レンズの中の大口径レンズにカテゴライズされます。

 標準レンズは、通常、40mm~60mmくらいの焦点距離で、視覚よりやや狭い範囲が写るレンズです。マニュアルフォーカスカメラが主流のころは、ごく当たり前に一本目のレンズとして購入するものでした。

 当時、各メーカーは同じ焦点距離であっても、明るさによって複数本販売していました。その中でも大口径は、メーカーの顔でした。競い合うように、高画質の大口径レンズを開発していました。当初は50mmの大口径化が難しかったためか、55mmや58mmなど、50mmよりも少し長い焦点距離のレンズが開発、発売され、このレンズは大口径レンズの第二世代と言える時代のものです。さらに進むと、非球面レンズが採用され、よりシャープな写りが期待できるものとなりました。

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 フィルター径は52mmですが、そのいっぱいにレンズが収まっています。焦点距離やシリアルナンバーは、50mmF1.4であればフィルターの内側に収まっていますが、このレンズでは収まり切れず、ピントリングの前面にあります。このレンズの見た目だけでも大満足です。

 

 ただし、同じく現役のAi-s50mmF1.4に比べると、弱点がないわけではありません。それは、若干重いことと、最短撮影距離が50cm(F1.4は45cm)であることです。現実的に、F1.2でないとどうしても撮影できないなんていうケースはほぼありません。実用的にはF1.4のほうが優れています。しかし、それでも、一回目に持ってきたのは、それ以上の魅力があるからです。

 

 F1.2で近接撮影をすると、ピントの合う範囲はほんの1mmあるかないかです。その1mmの平面上にあるものだけにピントが合い、あとは、なだらかにぼけていきます。遠景には何があるのかすらわからない描写ですこの、絵では表現できない、そしてピント合わせの慎重さが求められる緊張感こそが、このレンズの醍醐味です。また、ピントリングの滑らかさや、絞りリングの滑らかさは、F1.4よりもランクが上なことを感じさせてくれる官能感を有しています。

 

 このレンズは、一昨年の秋に「もうすぐなくなるらしい」というデマを信じて、あわてて新品で購入しました。6万円前後だったと思います。今買うのであれば、新品での購入を是非お勧めします。36年間現役であったとはいえ、この間にコーティングを含め、多くの改良を重ねてきております。最終型が一番良いに決まっております。また、36年前のものって、3昔前ですよね・・・もしかしたら、まだ生まれていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

shop.kitamura.jp

 

 最新型の大口径レンズの進化は目を見張るものがあります。F1.2やF1.4からキリキリに解像し、実を撮るのには最適かもしれません。しかし、このレンズの穏やかさや最新型のものに比べると圧倒的に小型軽量にもかかわらず、ずっしりとした密度の高さ、各稼働部位の緻密さ、品格、まったく所有欲においては引けを取るものではございません。

 

 いつまでも販売を続けていただけるとは思っておりません。このレンズを買うのであれば、今でしょ!

 

 さて、次は何のレンズにしようかな・・・しばらくは、ニコンシリーズが続きそうです。