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カメラの話(個別第四回) ペンタックスLX(第三世代)

 さて。

 

 今回は、個別第一回でご紹介いたしました、ニコンF3(以下、F3と省略)と同時期デビューの素晴らしいカメラ、ペンタックスLXについてお話ししましょう。

(参考)

film-camera-challenge.hatenablog.com

 1980年に、一眼レフカメラの老舗である旭光学が威信をかけて完成させた、プロ用機種です。まずは、外観から。

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 私の所有するLXは、前期型のノーマルなものに、グリップB(ストラップ装着金具取り付け済)を取り付けただけの、オーソドックスなものです。ファインダー(頭)部分は交換可能で、FA-2というトンガリ頭のものも持っていますが、ファインダー内で設定絞り値の確認ができなくなり不便なので、仕舞ったままになっております。くっついているレンズはマニュアルフォーカスの50mmF1.2、大口径レンズです。LXはF3と比べて小型軽量であるため、F1.2レンズだとレンズのほうが重すぎてややバランスが悪いのですが、私がLXを入手した時に新品で購入できたマニュアルフォーカスレンズの標準レンズはこのレンズだけでしたので、清水の舞台から飛び降りるつもりで購入しました。総金属製でズシリと重く、各部の動きは滑らかで、高級品として申し分ない触感です。

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 レイアウトは非常にオーソドックスなものです。左側に巻き戻しクランク、フィルム感度設定ダイヤルと露出補正ダイヤル、ファインダーすぐ横のボタンは露出計スイッチと露出補正ダイヤルのロックを兼ねています。なお、このボタンを押しながらボタン基部のレバーをファインダー側に動かすと、ファインダーが手前側にスライドしながら外れます。右側は巻き上げレバー、シャッターボタン(ロック付き)、シャッタースピード設定ダイヤル。シャッタースピード設定ダイヤルの「AUTOMATIC」の横にあるボタンは、絞り優先オートモードとなる「AUTOMATIC」時にのみシャッタースピード設定ダイヤルがロックされ、その解除ボタンとなります。非常に、標準的なレイアウトですが、普通じゃないのがこのカメラの形。真上から見ると、前側が少し窄まった台形になっていて、これが、手で包み込むのにものすごく心地よい形なのです。

 

 F3と比べてみましょう。

 

〇LXとF3の共通点

・ファインダーが交換式で、多種類が用意されていた。

・ファインダースクリーンも交換式で、多種類が用意されていた。

・自動巻き上げ装置をはじめ、多種のオプション装備品が用意されていた。

マニュアル露出と絞り優先オートが可能である。

・露出を測る方法は、ミラー中央部が半透過性となっており、似た構造である。

・横走りチタン幕シャッターである。

・巻き上げを小刻みに分けることが可能(分割巻き上げ)である。

・電源はLR44ボタン電池×2個である。

 

〇LXが優れていると思われる点

マニュアル露出では、高速側シャッター(X=1/75秒以上)、バルブは機械式シャッターであり、電池が切れても撮影できる。F3は緊急非常シャッター(1/60)とタイム露出のみが機械式シャッターである。

・防塵・防滴構造である。

・小型軽量である。

・シャッターダイヤルの数字が浮き彫り型となっており、真っ暗な中でも手探りで扱うことができる(人がいる)。

・露出計が、わかりやすい。

・ファインダー倍率が0.9倍であり、かなり大きく像が見える。F3はノーマルで0.8倍、多数流通しているHPファインダーは0.75倍である。

・普通にストロボが使える。F3に汎用のストロボを使うときは、巻き上げレバー部にアダプターをつける必要があり、巻き戻し時及びフィルム交換時には一度取り外す必要がある。

・絞り優先露出の時、撮影する瞬間の光の量を測る「ダイレクト測光」であるため、絞りに異常があるレンズでも適正露出で撮影できる。F3にはこの機能はない。

 

〇F3が優れていると思われる点

・F3本体もであるが、レンズ、オプション品の流通量がLXよりもずっと多い。

・ファインダーが明るくピントが見えやすい。ただし、LXのファインダースクリーンを2000年に発売されたナチュラルブライトマットに変更すると、ほぼ同等と思われる。

・ファインダー視野率が100%であり厳密なフレーミングが可能である。LXは98%で、ファインダーで見えている+周囲2%がフィルムに写しこまれる。

・巻き上げレバーの軽さ。LXの巻き上げはしっかり感があり、かつ引っ掛かりやトルクの変化は少ないが、F3の極上さが上回る。

・チタン外装バージョンが一般的に売られていた。LXは限定販売であり、今もきれいなものがオークションや店舗に出てくると、すっごく高くて手が出ない。

・絞り優先露出時に、露出固定ボタン(AEロックボタン)があり、露出補正以外の露出制御の手法が取れる。

・右手側にグリップがあり、保持感が良い。LXはオプションのグリップがないと手が余るし、これから所有するのにあたり、グリップの流通量は非常に少なく手に入れにくい(高価)と思われる。

・ストラップがねじれない。LXはストラップの取り外しが可能な金具があり、その部分でクルクルとストラップがねじれ、扱いにくく感じることがある。

 

〇結論

 引き分け。

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 間違いなく、どちらも非常に優秀で、格好いいカメラです。どちらのカメラを購入、入手しても、後悔することはないでしょう。

 そういえば、私がこのカメラを入手したのは2001年だったかと思いますが、その時、ミラーの上りが緩慢でオーバーホールをしました。ダンパーの異常ということでしたが、修理費+オーバーホール費で7万円近くかかり、びっくりしました。その直前にオーバーホール(修理なし)したF3は3万円でおつりがありましたから。流通量やメンテナンス性を考えたら、F3のほうが無難ですね。

 

 ペンタックスLXをまとめますとこのようになりました。

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携帯性は、コンパクトではあるものの、やや横長のため1点減点。

デザインは、ノーマルファインダーをFA-1をつけても、トンガリフィアンダーFA-2を付けても最高に格好良く、満点。ファインダー前面とエプロン部が面一になるのが格好いいです。

質感は、ちょっと塗装が弱いのか、さほど使っていないにもかかわらず結構ハゲハゲになっているので1点減点。

操作感は、巻き上げレバーにやや引っ掛かりがあることと、ミラーが戻るときにバタ付きが微妙に感じられるので1点減点。

ファインダーは、明るく、倍率も高く、文句なしの満点。

入手のしやすさは、販売時にあまり売れなかったことと、持っている人が手放さないためか、調子のよい個体が少ないため、2点減点。

堅牢・修理は、プロ用機で防塵・防滴をうたっているため、堅牢ではあるものの、特殊性が強く、修理困難となっていることから1点減点。

システム力は、レンズの流通は多いものの、LXのパーツ、例えば、ナチュラルブライトマットのスクリーンやグリップは流通が少なく、また、定価の数倍っていうこともザラなので、1点減点。

 

 LXは流通量が少なく、程度の良いものを入手するのが難しくなってきていますが、LXの雰囲気もぜひ味わっていただきたいと思います。なお、ニコンペンタックスともに、最新のデジタル一眼レフでも同一のマウントを採用しておりますので、レンズの互換性はありますが、どちらのメーカーも、最近発売のレンズからは絞りリングがなくなり、最小絞り値に固定しているのを電子制御するようなシステムになっておりますので、最新レンズをF3やLXに装着は可能なものの、最小絞り値でしか撮影できない(使い物にならない)ので、マニュアルフォーカスのレンズも一緒に入手されることをお勧めします。