さて。
前回は、四代目のニコンのフラッグシップ機であるニコンF4をご紹介いたしましたが、今回は、このF4の評価を下げてしまうほどの名機であったF90XSをご紹介いたします。
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1988年に、世界初の1/8000秒シャッターを搭載したオートフォーカス一眼レフ機「F801」が発売され、オートフォーカス機能の強化とスポット測光を搭載した「F801S」に進化し、さらに、オートフォーカスエリアが広くなった「F90」に進化したのちに発売されたのがF90Xです。まずは、外観から。私のF90XSには、縦位置グリップが装着しております。もちろん、外すことも可能です。
F90、F90XSには裏蓋の違いで、ノーマル、D、Sの3種があり、Dはデータパック(日付写しこみ機能)が、Sはマルチファンクションバックといって、なんか、いろんな機能付きとなりました。が、使い方がメンドくさく、結果的にほぼ使いませんでした。唯一使った機能は、「AEロックとAFロックを、AEロックレバーで同時に作動させる」ことだけ。まぁ、合ってもなくても大差ありません。これがそのデータパックです。ほこりっぽいものが見えますが、これは、ほこりです。この時代のニコンの一眼レフは、軟質ゴム部が経年劣化し、ベタベタするのです。これは大いなる弱点です。アルコールでセコセコ拭くと、かなりきれいにはなります。
まぁ、今ならF801もF801SもF90もF90XもF90XSも数千円で手に入るので、どれでも良いでしょう。といっても、F90XSは、私が購入した1999年に、定価16万円、税抜き10万円で購入した、とっても高級なカメラだったのです。操作系統はこれら4機種とも非常に似ております(F90とF90XSは全く同じ)。1ボタン1機能で、ボタンを押しながら右手親指部のダイヤルをクルクルと調整。調整した内容は、右側の液晶表示やフィアンダー内の液晶表示で確認、というわけです。
ニコンF90Xの魅力は、マニュアルフォーカスレンズであっても、中央部重点測光のみとはいえ露出計が稼働し、マニュアル露出と絞り優先オートが使用可能であること、単三乾電池4本で駆動すること、歯切れのよいシャッター音、92%の視野率とはいえ、0.78倍とF3HPやF4を超えるファインダー倍率とピントの見やすさ、といったところでしょうか。ちなみに、F801とファインダースクリーンの大きさは同じですが、スクリーン自体は別物です、F801にF90用のファインダースクリーンを入れると圧倒的にピントが見えやすくなりますのでお勧めです。
ニコンF90Xは、発売当初、非常に評価は高かったと思いますが、2000年以降、その評価は一変します。プラスチック丸出しとか、ワイドフォーカスは扱いにくいとか、いろいろと不満が言われるカメラになってしまいました。その理由は、ただ一つ。後継機種のニコンF100が、金属外装で、第五世代目のフラッグシップ機であるF5にそっくりの操作性だったからです。
実は、私もF100を所有していた時期がありましたが、すぐに手放してしまいました。思い入れのこともありますが、それ以上に、「F5とそっくりなF5の下位機種」という立ち位置が嫌いだったからです。F90Xは、F4と撮影へのアプローチを異としたうえでも操作性が洗練された、単独でも映えるカメラでした。その輝きを、F100に感じることはできないのです。F5のチタン外装に比べて、耐久性で劣るマグネシウム外装。コマ感覚を赤外線で監視しているF5に比べて、スプロケットで数えているF100。シャッター検査機能を有するF5に比べて、有さないF100。これらのF5の機能は、すべて、F90Xはもちろん、F4も有していません。しかし、外観がソックリであるがために、F5が有しているにもかかわらず、F100が有していないことは私には不満なのです。
では、ニコンF90XSをまとめますと、このようになりました。
携帯性は、電池抜きで785gとF3HPと大差ありませんが、グラマラスなので、結構かさばるため、2点減点。
デザインは、オーソドックスではあるもののややボッテリとしているので2点減点。F801シリーズのほうがシュッとしていて格好いいです。
質感は、プラスチック感満載の上、裏蓋がべたべたするので3点減点。
操作感は、一ボタン一機能で非常にわかりやすいが感触は特上とは言えかねるので1点減点。
ファインダーは、ピントの見え方や倍率は優秀ではあるものの視野率が92%と低いので1点減点。
入手のしやすさは、1万円から買えちゃう個体が、選べるくらいあるので満点。
堅牢・修理は、上位機種であったため堅牢性は高いと思われるが修理はまず難しいだろうから2点減点。
システム力は、Ai化されていればマニュアルフォーカスのニコンレンズが使用可能であることから1点減点。
かなり操作性も洗練された、高級機種にもかかわらず、今やリサイクルショップの「ご自由におさわりください」コーナーに入ってしまっているカメラです。しかし、そのポテンシャルはプロが仕事で使用するのに耐えうるものであり、さらには、当時のフラッグシップ機であったF4をも超える部分を持つカメラでございました。
初めてカメラとして使うには、ちょうどいい練習相手になってくれることでしょう。