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カメラの話(個別第十回) ミノルタSRT-super(第二世代)

 さて。

 ご紹介できるカメラも残りわずかとなってきました。最近の、といっても20世紀末のもので、発売から20年が経過したものではありましたが、フィルムカメラとしては比較的最近のものの紹介が続きましたので、今回はちょっと古いものを。第二世代(機械式一眼レフカメラ)の、ミノルタSRT-superです。

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まずは、外観から。

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  大振りで、角ばっていて、いかにもレトロ感が漂うカメラです。1973年発売のカメラではありますが、1966年発売のSRT-101を改良したカメラとなりますので、基本設計は60年代のものです。SRT-101は、露出計を搭載(ミノルタでは初めてのTTL露出計を搭載※)し、かなり市場で好評であったことや、ユージンスミス氏(国内では水俣病の取材で有名な米国のカメラマン)が愛用した大変有名なカメラです。そのカメラに、ファインダー内で絞り値がわかるようになったこと、ファインダースクリーンの改良、ストロボがクイックシュー方式になったこと、といった小改良が加えられたものです。2年後にはSR505という機種にマイナーチェンジしたため、発売期間は実質3年弱ではありますが、現在でも結構市場にあり、飲み会参加費程度で購入も可能です。

TTL露出計:撮影用レンズを透過した光の量をはかる露出計。スルー・ザ・レンズの略号。

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 上から見た図ですが、長方形です。そして、巻き上げレバーの軸受け部にシャッターボタンがあります。さらに、巻き上げレバーの回転角度が非常に大きいです(ただし、小刻み巻き上げは可能です)。私は比較的手の小さ目男子であり、このカメラは手に余ります。また、巻き上げ時に、親指の腹が、上記写真の右下角にちょうど当たり、痛いです。

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 シャッター幕は布幕横走り式シャッターで、非常に静かです。大振りなボディーがショックを和らげてくれるからでしょうか、非常に良いシャッター感触をしております。また、オーソドックスな機構ですので、まだ、職人さんが直してくれることが多く、分解清掃を引き受けてくれる修理屋さんも多くいます。ただし、シャッタースピード表示のために多くの伝達用の「糸」が張り巡らされており、修理屋さん内では結構メンドクサイカメラ、との評価もあるようです。

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 下からの図ですが、写真左側が露出計のスイッチ、右側の細かい凹凸がある円形部分が電池室です。露出計の電源は、しょっちゅう切り忘れますが、入ったままでも暗い場所であればほぼ電池を消耗しないのか電池切れになった経験はありません。また、電池はH-D水銀電池ですでに販売されていないため、アダプター等を利用する必要があります。ほかには、巻き戻し時ボタンと三脚穴のみで、非常にシンプルです。

 SRT-superをまとめますと、このようになりました。

 

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携帯性は、大振りなので3点減点。ただし、重さはあまり感じません。

デザインは、オーソドックスとはいえ、レトロ感満載のため2点減点。

質感は、大振りのわりに軽く、あれっと感じるので2点減点。

操作感は、シャッターの感触は良いものの、巻き上げレバーの操作に難あり(当方の手の大きさの問題もあり)のため2点減点。

ファインダーは、シャッター・絞り値の表示があり、露出計指標も明快ではあるものの、時代柄スクリーンは暗いこと、四隅が角ではなく丸くなっていることが気に入らず2点減点。

入手のしやすさは、流通量が多いこと、価格もこなれていることから満点。SRT-101も視野に入れると選び放題です。

堅牢・修理は、修理はほとんどの場合で可能ではあるが、当然メーカー修理は不能であることから1点減点。

システム力は、ミノルタマニュアルフォーカスレンズの流通は結構多いものの、そもそものこのカメラの拡張性がないため2点減点。

 

 残念ながら、当方の評価ではあまり好評ではないものの、手放さないのにはわけがあります。それは、このカメラが最後まで動くミノルタSRマウントのカメラであることが明らかだからです。また、私のカメラはシルバーボディですが、ブラックボディは打って変わって精悍さを備えたカメラでもあります。機械式一眼レフカメラは、人気があるもの、ないものが二極化しているようにも思います。前者には、

オリンパスOM-1

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キヤノンF-1改

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 ほかに、ニコンF、F2、NewFM2などがあります。これらのカメラと比べると、大変残念ながら、ミノルタSRT-superは、不当に低い評価価格でございます。1回の飲み会参加費で買えるものも多く流通しております。しかし、その感触は決して人気のある機種に劣るものではなく、ミノルタのレンズもまた、他社のレンズに見劣りするものではございません。初めてフィルムカメラに、他のミノルタ一眼レフカメラも合わせて、是非お勧めです。

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 もう一つ、このカメラの意欲的な試みを。

 初めの写真で、ファインダー部の基部に「CLC」の表示があることにお気づきでしょうか。これは、その当時ミノルタが一押しとしていた「CLC測光」搭載の証です。

 横位置(普通のカメラを構えた状態)で屋外で人を撮影する際(記念写真を撮影するところを想像してください)、通常、頭上には空や太陽があり、下部は服や風景で暗い状態にあります。このカメラが発売された当時、他社のTTL測光を搭載したカメラは「中央部重点測光」や「平均測光」を搭載しており、被写体よりも背景が暗い場合に露出計の指標通りにシャッタースピードと絞り値を合わせると、被写体が暗くなってしまう状況に陥ることが多々ありました。

 それを、このCLC測光では、二個の露出感知素子をファインダーの上下に直列で配することで、極端に暗くもしくは明るく露出表示をすることを避ける方式となっております。特に厳密な露出設定が必要となるスライドフィルムではこの方式のみで追い込むことは困難と思いますが、露出に寛容なネガフィルムで撮影する場合にはこのCLC測光、今でも十分役に立ちます。残念ながら、ミノルタも1977年に発売したXD以降、搭載することはありませんでしたが、高精度の分割測光を搭載するニコンFA(1984年発売)から20年近く前に、非常に単純な仕組みではあるものの、撮影時の失敗を減らしたいと考えたミノルタのカメラ開発者様の心意気を感じる素晴らしい仕組みと思っております。