フィルムで写真を撮ってみませんか。

「フィルムを使う写真に興味を持つ人を一人でも増やす」ことが目標の一個人の活動

カメラの話(コラム第三回-14)カメラと、私。(データに対する不安)

 さて。

 

 オールドレンズをミラーレス一眼で撮影し、どうにもその描写性に納得できていなかった原因の一員は、アダプターではないかとの推測に至り、その画像をもってそのレンズの性能と判断されることに、オールドレンズはもちろん、当時の開発者様、生産者様ははさぞ不本意に思われているだろうことに気づき、これは、正しく本来の使い方であるフィルムカメラを使うべきだと気づいたところでしたが、それに加えて、フィルムでなければと思える出来事が二つありました。

 

 一つ目は、東日本大震災です。仕事上のことなので詳細は書けませんが、短期間ながら宮城県のとある市に派遣されておりました。その仕事の内容は書類上のものばかりでしたが、現地で流れるニュースと、当方所在地で流れるニュースは異なるものだと初めて知りました。

 その中で、津波に流されて泥だらけの写真を洗うボランティアの方がいる、と。

 さて、デジタルカメラで撮影し、そのデータを一部でもプリントしている人がどれくらいいるのでしょうか。そのプリントも、家庭の水性インクを使用したプリンターでの出力がほとんどなのではないでしょうか。

 私は、デジタルカメラを購入、使用し始めてから、外付けハードディスクドライブに書き込んでおります。常に2台体制にしておりますが、容量不足以外の、書き込み、読み込み不良により廃棄したハードディスクドライブは3機になります。

 水没したら、それも、泥水に使ったら、塩水に使ったら、まず、データの復旧は不可能でしょう。しかし、デジタルカメラで撮影した画像は、容易にディスプレイ上に表示されるため、印刷もしておりません。となると、その情報は、すべて失われることになります。

 

 二つ目は、子ども関係です。我が家には保育園児がおりますが、その同級生の父親が、子どもの誕生の時の映像DVDが読み取れなくなった、自身が幼い時のビデオテープは見れるのに、と、嘆いておりました。

 ディスクは、その保存の状態により容易に読めなくなることは、安物のCD-Rに音楽を書き込み、車の中に置いているとあっという間に読めなくなるということで何度も経験済みではありましたが、CDでもDVDでも、おそらくブルーレイでも同じなのでしょうね。

 

 ある写真について、写真家さんが「容易にボタン一つで消せるデータが、自分の作品だと言えるのか」という内容を述べてらっしゃいました。

 一枚一枚、丁寧に撮影した、化学反応の結果であるフィルム写真が、今でも輝いている芸術の一つであること、芸術とまで言えないものでも、大切な記録であること、そして、その記録の本来の目的である保存する能力は、デジタルを凌ぐものであることに気づきました。