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カメラの話(個別第二回) キヤノンF-1改(第二世代)

 さて。

 

 今回は、個別第一回のニコンF3より一世代前のカメラになります。ニコンと双璧をなす、日本の誇るカメラメーカー、キヤノンのF-1改です。1971年発売のキヤノンF-1の改良版で、1976年に発売された機械式一眼レフカメラであり、露出測定以外に電源を必要としません。すべて、巻き上げレバーで巻き上げたエネルギーで動いている、という感動があります。

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 プロ用カメラはニコンが席巻していたところに、老舗であるキヤノンがプロユースに耐えられるカメラとして開発し、これ以降ニコンキヤノンのプロ機をめぐる戦いが繰り広げられ、それは今でも続いている、と言って過言ではないでしょう。プロ機というものは、そのカメラメーカーの華であり、シンボルであります。

 格好いいカメラです。写真からいきましょう。

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 カメラは漆黒で、何重塗装だったか忘れましたが、40年を経過したとは思えない美しさです。重厚感もありますが、実際、かなり、重いです。なお、この写真のカメラには、「カプラーF」という、ファインダーの上にストロボを搭載するためのオプション品が付いております。私はこのカメラでストロボ撮影をすることはありませんが、外しておくとなくしそうなので、ずっとつけっぱなしにしております。

 

 レンズも当時物のFD50mmF1.2です。上側に赤く書かれている「SSC」は、キヤノンがカラーフィルム時代になることを見越して開発、採用したレンズのコーティング「スーパースペクトラコーティング」の略号です。

 

 ライバル関係にあったニコンのF2シリーズは、スマートなファインダーであるノーマルファインダーでは露出計が搭載されず、露出計が搭載されたF2フォトミックシリーズはでっかい頭をしておりました。その点、キヤノンF-1は、このスマートな外見にもかかわらず、露出計を内蔵しておりました。しかし、美点のみではありません。

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 ファインダーを外すと、ファインダースクリーンという擦りガラスがあります。このファインダースクリーンの中心部の長方形、やや暗いグレーになっている部分にハーフミラーが埋め込まれ、そこから光をすこし失敬し、露出測定、つまり、明るさを測定しているわけです。そのため、ファインダーを覗くと、中心部分が長方形に、わずかではありますが暗く見えます。ちなみに、この写真の個体は私が中古で購入した時にファインダースクリーンにカビが生えてしまっておりました。そこで、関東カメラサービスという修理屋さんが、このカメラの後継機種であるNew F-1のファインダースクリーンを改造した明るいタイプのスクリーンを作成、販売しておりましたので、それを購入し、使用しております。なので、ノーマルのF-1のファインダースクリーンは全体的にもっと暗く、暗く見える部分はさらに暗く見えてしまうわけです。つまりは、この写真は消して誇張しているわけではなく、実際はさらなる明暗差がある、ということです。これは、気になる人は気になるかもしれません。

 F-1改と紹介しましたとおり、F-1から改良されたものとなります。その大きな改良点がこちら。

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 巻き上げレバーにプラスチックの当てが付き、巻き上げの角度が小さくなり、操作性が向上しました。「改」でないものは、巻き上げレバーの親指が当たるところが金属むき出しです。他に、設定できるフィルム感度の範囲が広がったようですが、今となっては、改良点は巻き上げ関係のみといってよいでしょう。「改」のほうが当然、扱いやすいと思いますのでお勧めです。

 

 このカメラを初めてカメラにする際の欠点は、3つです。

 一つ目は、重いこと。レンズを付けると1kgを軽く超えます。

 二つ目は、露出計に使用する電池が水銀電池であり、すでに生産されていないこと。アダプターを使用するか、水銀電池と同じ形をしたアルカリ電池を使用することになりますが、どちらにしても割高です。もっとも、アダプターは一度買ってしまうと、あとは汎用のボタン電池が使えることにはなるのですが。

 三つ目は、良い状態のものは高いこと。プロ用機として開発されたので耐久性はあると思いますが、初めてカメラがボロボロなのも気が引けるでしょう。私は、不動品を入手し、分解清掃調整を業者に依頼し、整備して使用することにしました。おかげで、本体購入金額の4倍ほどの整備費用が掛かりました。

 

 このカメラを初めてカメラにする際の利点もまた、3つです。

 一つ目は、キヤノンは第四世代、つまりオートフォーカス化する際にそれまでのものとはレンズとカメラをつなぐ金型、マウントを変更しました。結果、このカメラで使用するレンズは、今のデジタルカメラでは使用できません。なので、不人気であり、かつ、当時たくさん売れたので、数はあります。したがって、一部のレアものを除くと、非常に安価に交換レンズがGETできます。ただし、キヤノンのマニュアルフォーカスレンズは、カメラから外すと絞りが絞られてしまうので、レンズにカビがあるかどうかのチェックが難しいです。丹念にレンズの中を観察する技量が必要です。

 二つ目は、もう、カメラの中のカメラと言える、この風貌と、重厚感。所有欲を満たしてくれること間違いなしです。

 三つめは、機械式カメラゆえのすべて自身で設定する達成感と、修理可能性。露出もピントも、自身で考え、自身で設定する必要があります。なお、電子部品は露出計のみなので、調整だけでかなりの個体が修理できると思います。また、私の勝手な理論でありますが、

「過去40年間動いてきた機械ものは、きっちり整備をすれば、あと40年間使い続けることができる。」

 私は現在アラフォー世代。あと40年間動いてくれるとなると、平均寿命までカバーしてくれます。一生のお付き合いができるカメラ、と言えます。

 キヤノンF-1改をまとめますと、このようになりました。 

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携帯性は、800gオーバーで重く、常に持ちあることは苦行なので3点減点。

デザインは、怒り肩でファインダー部が小さいため、ややアンバランスのため1点減点。

質感は、ピアノブラックのような素晴らしい塗装で言うことなしの満点。

操作感は、巻き上げが非常にスムーズで、シャッターの感触も良く満点。

ファインダーは、構造上露出計に持っていく光の範囲が暗いので少し気になり1点減点。

入手のしやすさは、中古市場にそれなりに数はありますが、きれいなものは価格が高く、ジャンク品はそれなりの程度となり、ちょうどバランスの良いものはあまり見つかりませんので2点減点。

堅牢・修理はプロ用で壊れているものをほぼ見かけないので、堅牢性はあるものの、部品であるチタン薄膜シャッターは特殊性が高いためこれがやられると修理困難であると判断し堅牢・修理は1点減点。

システム力は、キヤノンマニュアルフォーカスレンズは多く販売されたものの販売終了後すでに20年近く経過し、良品が潤沢とは言えないため1点減点。 

 

 個別第一回、第二回と、プロ用カメラが続き、ちょっと私もおなか一杯になってきました。次はもう少し、ライトでとっつきやすいカメラを選定してみます。