さて。
今回は、ペンタックスの非常にオーソドックスなカメラであるKXを紹介します。同じ名前のデジタルカメラ(こちらも同じくペンタックス)もありますが、もちろん、フィルムのカメラの紹介です。
このカメラは、1975年にペンタックスが意を決して、それまでのM42マウント(ねじ込み式マウント)から決別し、新たに作成したKマウントに移行する際に発売された、K2、KX、KMの3機種のうち、真ん中ランクになるものです。ちなみに、K2は電子制御シャッターを搭載し、絞り優先オート撮影を可能とした、第三世代のものとなります。
KXとKMの違いは、KXにあってKMにないものは以下の通りです。
・絞り値がファインダー内で確認できる
・ミラーアップ機能
・測光素子がリニアに反応するものが搭載
・銀蒸着プリズム(KMはアルミ蒸着のため、暗く、青っぽく着色する)
・裏蓋部のメモホルダー
塗装は角が少しだけすれて、地金の真鍮の色が見え隠れしているのがお判りでしょうか。この塗装、とってもツヤツヤしていて、40年経っているとは思えないものです。この塗り以上は、キヤノンF-1改しかありません。
(参考)
film-camera-challenge.hatenablog.com
さらに、KMの下位機種として、海外へはこの時期から、国内販売は1990年代になってからK1000というものが発売されました。このカメラには、絞り込みボタンがなかったので、私の興味の対象外でした。
それまでのペンタックスは小型軽量を売りにしておりましたが、さらなる小型軽量を追求したオリンパスにお株を奪われてしまったため、本カメラは気合を入れて作ったのだとは思いますが、翌年には小型軽量機のMX、MEを筆頭とするMシリーズが発売されてしまい、短命にその役割を終えました。
(参考)
film-camera-challenge.hatenablog.com
film-camera-challenge.hatenablog.com
KXの魅力は、抜群の安定感です。それ以前のペンタックスSシリーズと同様に、布幕横走り機械式シャッターという普遍的な機構を搭載しており、最も修理可能性が高いカメラのうちの一つだと思っております。他に以前紹介した布幕横走り機械式シャッターのカメラにはこのようなものもあります。
film-camera-challenge.hatenablog.com
ペンタックスKXをまとめますと、このようになりました。
携帯性は、大振りなので2点減点。しかし、重さはさほどでもありません。
デザインは、非常にオーソドックスであり、風格もあることから満点。
質感は、この後発売されたMXよりも塗りの質が良いと思われるもののLXにはかなわないかと思い、1点減点。
操作感は、巻き上げ、シャッターの感触共に文句なしだが、ミラーの反響音が響くので1点減点。
ファインダーは、機能的で見やすいものの時代柄暗いため、1点減点。
入手のしやすさは、実質1年間程度しか販売されず、非常に数が少ないです。しかし、あれば数千円からの入手が可能であるため、3点減点。
堅牢・修理は、メーカー修理は不可ではあるものの修理屋さんでほとんどの修理が可能と見込まれることから1点減点。
システム力は、Kマウントのレンズはもちろん、アダプターでそれ以前のM42マウントのものも全く差し支えなく使用できるが、本体に拡張性がないため1点減点。
実はこのカメラ、とっても気に入っているのです。LXよりもお気に入りで持ち出す機会も多かったのです。レーダーグラフではいまいち点数が伸び悩んでいるようですが、数が少ないこと以外には、ほぼ不満のないカメラなのです。さすがに、Sシリーズは古く、M42ネジマウントしか使えないことに不安を感じるあなたに、オリンパスへの対抗意識の塊で0.5mmずつ縦横高さを小さくしたMXのスタイルがいまいちしっくりこないあなたに、マウント変更という一大事を担った、ペンタックスの歴史的名機を使ってみたいあなたに、LXはマニュアルフォーカスカメラを使うのに当たり前だよね、もっと硬派にとんがってみたいよねと思うあなたに、非常に適したカメラだと思います。ペンタックスの中では、一押しです。