フィルムで写真を撮ってみませんか。

「フィルムを使う写真に興味を持つ人を一人でも増やす」ことが目標の一個人の活動

カメラの話(個別第十四回) オリンパスPEN-FV(第二世代)

 さて。

 

 カメラの話(個別第十三回)での修理待ちのカメラは、このカメラでした。カメラの話(個別第六回)でご紹介いたしました、オリンパスOM-1以前に作られていた、伝説のハーフサイズ一眼レフ「オリンパスPEN-F」シリーズの最終形態です。実は、前々から興味はあったものの、1960年代の製品であり、すでに50年以上経過しており、耐久性、メンテナンス性に不安があり、ずっと手にすることはなかったものの、近所のカメラ屋さんで見つけてしまい、つい、お持ち帰りとなりました。

(参考 OM-1)

film-camera-challenge.hatenablog.com

 では、外観から。 

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 一眼レフカメラにもかかわらず、頭のでっぱりがないことがこのカメラの外見上での最大の特徴です。また、ミラーで横に光を屈折させることにより薄型ボディーとなっていることも特筆すべき事項です。

 

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 上から見ても、あるのは四角のシャッターボタンとフィルムカウンター、巻き戻しクランクだけ。前面にシャッターダイヤルが、後ろ側に巻き上げレバーが、控えめに配置されています。

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 底板も超シンプル。巻き戻しボタンと、三脚ネジだけ。欲を言うなら、三脚ネジはレンズの延長線上に欲しかったです、ややバランスが悪いです。ただ、このカメラを三脚に据えて撮影する、ということ自体が少ないという考え方でしょうか。

 

 残念な点は、ファインダーが暗いこと。このカメラは、上位機種「PEN-FT」からTTL露出計を省いたもので、内部にハーフミラーを搭載しないことから、PEN-FTよりもファインダーが明るい、と言われているものの、つけている21mmF3.5レンズでは、室内でピント合わせが困難です。まぁ、時代柄仕方ありませんね。また、視野周囲が角取りされ、丸くなっているのも個人的にはNG。写真の四隅はぴっちり90度角のはずなのに、丸いとは、と思ってしまいます。

 不安だったメンテナンス性は、本機内部にカビがあったため、福岡のカメラ修理業者に修理を依頼したところ、1万円未満でオーバーホールまで可能でした。機械式カメラとはいえ、特殊なシャッター幕を有すること、機構も非常に特殊であることからいつまでも修理が可能とは思えませんが、一安心です。

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 私がこのカメラに興味を抱いていたのは、私の撮る写真の9割が縦位置写真(縦長)でございます。普通のカメラは、横長であるため、縦にして(私は通常、右手を下にします)撮影する必要があります。このカメラは、ハーフサイズカメラで、通常のフィルムを縦に2分割したものが1ショットとなります。したがって、普通に構えると、縦長写真が撮れるのです。人体の手は、縦長のものを持つよりも横長のものを持つ方に適しています。このカメラは、私が写真を撮るうえで非常に優れているのです。9割を、標準的な構えで撮影できますから。

 ただし、通常のフィルムの1/2の面積(正確には撮影コマの間があるので1/2以下の面積)であることから、引き伸ばしたときに荒くなる、とか、36枚撮りフィルムが72枚撮りになりなかなか終わらない、とか、色々とその副作用もありますが、緻密で高精度の写真が必要であれば高性能レンズに高画素デジタルカメラを使えば済む話。デジタルカメラで72枚なんてあっという間に撮っているのだから、36枚だろうと72枚だろうと、誤差の範囲である、というわけで、全然大した問題にしておりません。

 オリンパスPEN-FVをまとめますと、このようになりました。

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携帯性は、薄型で頭のでっぱりがなく、小型軽量で、文句なしの満点。

デザインは、他にない秀逸なデザインで満点。

質感は、肉薄感があること、巻き上げレバーの薄さが気になり2点減点。

操作感は、きびきびとした動きではあるものの、独特のシャッター機構のせいか、結構ショックがでかいので2点減点。

ファインダーは、暗いが、明るいレンズをつけて屋外で撮る分には大きな支障はないため、2点減点。

入手のしやすさは、50年以上前のカメラで、良いものがたくさんあるとは言えないものの、あればそこまで高いわけでもないので3点減点。入手のしやすさは初代PEN-Fや露出計内蔵のPEN-FTのほうが現実的です。

堅牢・修理は、古いことから修理に不安があるものの、今回オーバーホールが可能であったため、とりあえず2点減点。

システム力は、レンズの流通量が少なく、クモリがあるものが多くまともなものはほぼありません。また、絞りに粘着きが出たものも多いです。なお、絞り不良のレンズを使うと、カメラも不調になるといううわさもありますので要注意です。私は純正のアダプターでOM用レンズが使用できるようにしましたが、絞り込み測光となり、暗いファインダーがなお暗くなるため、3点減点。さらに、このアダプターを使用すると、外部露出計がつけられなくなるので注意を要します。

 

 結果的には、非常にユニークで面白いカメラです。また、ハーフサイズなので、ランニングコストも低く抑えられることも魅力です。それ以上に、縦位置写真が主体のかたには、これしかない、と言えるカメラです。通常のフィルムは縦2:横3の比率ですが、ハーフサイズカメラは、縦4:横3なので、やや正方形に近く、なんとなくおさまりが良い気もします。フォーサーズと同じフィルム比率ということも、今のオリンパスデジタルカメラとつながっている、そんな気もさせてくれる、50年以上前の名機です。