フィルムで写真を撮ってみませんか。

「フィルムを使う写真に興味を持つ人を一人でも増やす」ことが目標の一個人の活動

カメラの話(コラム第三回-13)カメラと、私。(気づいた真実)

 さて。

 私が長年探し求めており、10年以上の年月を経てようやく手に入れたものとは。

 

 一時期、ペンタックス製135判一眼レフカメラペンタックス67を併用していた時期があり、その時に、中判レンズのしっとりとした描写に魅せられておりました。その後、体力不足からペンタックス67は手放し、主体の中判カメラをゼンザブロニカS2に、主体の135判カメラはニコンとしていたところ、夢の製品が販売されておりました。

 それは、オールドブロニカのレンズを、ニコンFマウントカメラに装着するためのアダプターでした。

 当時、私はまだ大学生。そして、そのアダプターは6,7万円程度はする高価なものでした。買うか買わないか、悩んでいるうちに、売り切れとなり、買えなくなりました。

 オークションサイトで探すも、そんなコアなファンしか使わないもの、なかなか出てくることはなくただ1度出品されているのを確認するも、大幅に予算オーバーで買えませんでした。

 

 そして、一昨年。

 なんと、このアダプターと同等品が、海外で販売されていることを発見し、つたない英語で、アメリカのアマゾンから購入することができました。

 

 購入後、直ちに、ニコンD750で試写に向かいました。レンズは3本、50mmF3.5、75mmF2.8(ノーマルモノコート)、75mmF2.8DXタイプでした。目的は、75mm二本の比較でした。一般的に、オールドブロニカニッコール標準レンズを比べると、ノーマルレンズのほうが中心部の先鋭度は高い、DXタイプのほうが周辺部の画質に優れる、という評価があります。では、中心部のみ使用する135判ではノーマルタイプのほうが適任なのか、を検証することでした。

 まず、ノーマルレンズで撮影するも、どうにもフレアが出て、先鋭度が低いのです。コーティングのせいかと思い、ド順光で撮影するも、予期せぬフレアが出ます。それも、ファインダー内で確認できるものよりも、はるかにひどいものが。

 DXタイプに交換しても、そのフレアの色が白からやや紫がかったものになるだけで、その酷さは目を覆うものでした。

 おかしいな。長年、ゼンザブロニカS2で撮影するも、逆光でフレアっぽくなった記憶はほぼない。少なくとも、こんなにひどいフレアに悩んだことは、一度もない。

 後日、ブローニフィルムを購入、ゼンザブロニカS2で同様の条件で撮影して、やはり、逆光に弱くない(最新のものと比較すると当然弱いのだろうが)ことを確認。

 では、135判フィルムカメラではいかがかと思い、ニコンF3を引っ張り出して撮影。結果は、D750ほどではないものの、かなりフレアっぽく、使い物になるものではありませんでした。

 検証の結果は、フレアっぽさは、

D750>F3>>>>>>>>>>>>>>>ゼンザブロニカS2(ほぼないに等しい)

 

 これら3機種で異なる条件には、以下のものがあります。

1.デジタルかフィルムか。

2.135判フォーマットか6×6フォーマットか。

3.アダプターを使用しているか否か。

 

 D750とF3は、完全に同一の条件ではないこと、ほぼ同様のフレアが発生していることから、デジタルかフィルムかは大きな差ではないと思われました。

 フォーマットの異なりは、135判フォーマットでの撮影はレンズの優秀な中心部分を使用するという有利な条件となることから、フレアが発生する要因とは考えにくいと思われました。

 

 となると。そう。この画質低下の根源は、アダプターでした。

 F3に装着し、裏蓋をあけて除くと、アダプターの内側やマウント部分がピッカピカに輝いておりました。ファインダーで確認できる以上のフレアが発生したのは、おそらく、ミラーボックス内でさらに反射したのでしょう。

 

 α7にオールドレンズを装着して撮影すると、どうにもフレアっぽくなるなぁ、と感じていたのは、もしかしたら、アダプターのせいだったのかもしれない。

 そう思い、持っているアダプターを片っ端から覗いてみると、どれもこれも、内面反射がひどくありました。私が有するアダプターは、安価なものも、それなりの金額のものも含まれますが、どれも、盛大に、内面反射が起こっておりました。

 

 そもそも、オールドレンズには、最新式のレンズと比べると多くのハンディキャップがございます。

1.製造から年月が経ち、経年劣化が起きていること。

2.前所有者がいる場合には、使用実態がわからず、所有者次第では機構的にくたびれていたり、カビが発生した経緯があること。

3.無用な改造や、不十分な精度の修理が行われていること。

4.レンズ設計技術やコーティング技術が洗練されていないこと。

5.そもそもの使用が想定されないデジタルカメラに、アダプターを介して装着され使用されること。

 

 1~4の悪条件を跳ね返すには、ニコンのAi-sレンズの現行品を、新品で購入するしかありません。しかし、これらのレンズは1980年代初期に販売開始されたもので、それよりも古いものはありません。

 オールドレンズを所有している方で、直ちに改善できることは、5.の、本来の使用すべきカメラに装着し使用すること。少なくとも、私の検証では、最も大きな画質悪化要因は、アダプターにありました。

 オールドレンズにとって、デジタルカメラにアダプターで装着され、ユーザーから、「フレアっぽいなあ、ピントが甘いなあ、緩いなあ、でも、この緩さがいいんだよなあ」と思われるのは、極めて不本意なことであると思います。なぜならば、それは、オールドレンズのポテンシャルをスポイルしたものなのですから。